介護福祉士や社会福祉士の国家資格にも 出題される障害分野。
今回は 「障害者の権利に関する条約」ができるまでについて解説します
Screenshot_20241105-192320~2

■現在「障害者の権利に関する条約」に署名しているのは156カ国。
日本は2007年に署名し、現在、批准に向けて国内法の整備しました。
「障害者の権利に関する条約」とはどのような条約を解説します。

■「障害者の権利に関する条約」
21世紀で最初につくられた人権条約です。そして、「子どもの権利条約」を除いて、初めて「障がい」について明記された条約です。本条約は、「私たち抜きに、私たちのことを決めないで(Nothing about us, with out us)」というスローガンをもとに活動をしてきた障がい者団体も加わって作成されました。条約の当事者である障がい者が一緒になってつくった条約というのは初めてのことでした。
第34条にある、障害者の権利に関する委員会の委員18名の内、障がいのある人は17名。
「障害者の権利に関する条約」は前文と
50条の条文から成り立っており、障がい者
のために新たに権利を定めたものではなく、今ある基本的な人権及び自由を障がい者が有することを改めて保障したものです(第1条)
条約の特徴としては、インクルーシブ教育が原則であること(第24条)
手話は言語であること(第2条)などがあります

特に注目したい条文について解説します
Screenshot_20241105-195124~2
■障がいを理由とする差別の定義 ─
第2条:「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮
の否定を含む。)を含む。

解説
人権条約のなかで最初に障がいに基づく差別を禁止した「子どもの権利条約」にも存在していない差別の定義をしています。直接差別、間接差別、合理的配慮の否定が差別にあたるとされています。日本でも、2013年6月に成立した「障害者差別解消法」では、公共機関や民間企業に対し障がいを理由とする差別などの行為を禁じています。また、車椅子の方も使えるスロープの設置を行うなどの、過重な負担がない範囲での合理的配慮を求めています。


■合理的配慮 ─
第2条:「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特別の場合において必要とされるものであり、かつ均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
第5条3項:締約国は、平等を促進し、及差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

解説
合理的配慮とは、障がい者が障がい
のない人と同じように、権利や自由を
持ち、行使するときに、必要とされる適切な変更及び調整を行うことで、かつ、相手側に過度の負担を課さないものと定義されています。人権条約で初めて規定され、締約国に合理的配慮を提供するための適切な措置をとることを義務付けています。すべての人が互いを尊重し生活するために、個人だけで努力するのでなく、社会も努力することが求められています。
日本では 2024年4月 行政及び民間の事業所でも合理的配慮が法律で義務付けられました。


■法の下の平等 ─
第12条1項:締約国は、障害者がすべての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2項:締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者と平等に法的能力を享有することを認める。
3項:締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用することができるようにするための適当な措置をとる。